ベストシステムズ メールマガジン
公開日:2010/01/15

【第129号】新春特別企画 超並列戦隊クラスタマン 第二話

クラスタマン・レッド現る! その1 序章

前回までのあらすじ
――201X年、人類はIT産業のBシステムズ社に独占され政治、経済はすべてBシステムズ社のいいなりになっていた。かつてBシステムズの敵対会社であったIT企業はBシステムズ社の圧倒的な価格と政治力の下には無意味だった。岡田 愛人(おかだ あいと、34歳V6の岡田くん似)はBシステムズ社に勤務するしがないシステムエンジニアであったが、彼には隠された能力があった。大学時代の実験中に気を失って時に異星人に体を乗っ取られてしまったのだ。その名こそ正義の味方「超並列戦隊クラスタマン」だった。

 新宿・株樹町 年も押し迫った12月某日の夜、岡田 愛人はいつも通り、あるビルの地下のへの階段を下りていた。薄暗い通路に浮んだひと際明るい看板には「リンダ」と書かれていた。重厚なドアを押しあけるとそこにはいくつものシャンデリアが飾られたクラブ風のホールで客は数人がいるだけだった。
 「あ~ら、あ~ちゃん、お久しぶりね~」叩けば崩れるような厚い化粧に満面の笑みを浮かべながら近づいてくる40過ぎの女性はママのリンダだ。そう、ここはリンダ・ママがオーナーの店。この店は愛人の友人である日本国元首相、大曽根の甥っ子に紹介してもらった。深々と用意されたソファーに腰を下ろしながら愛人が答える。「あ~ママ、最近こき使われて忙しくてね。内は人使いが荒くて。で、千絵ちゃんはいる?」
 「いるわよ~。でも何か最近気分が落ち込んでいるらしくて元気がないの。元気だしてあげて。千絵ちゃ~ん!」とママが黒服のマネージャに千絵を頼む。すると長谷川京子似の美人が奥で立ち上がって、こちらに近づいてくる。「愛人さん、ちっとも最近来てくれなかったわね。」と愛人の横に座りながら千絵が横っ腹を突っついてきた。「いやあ、千絵ちゃん。今日は一段と美しいねえ。やっぱり今度デートしようよ。」「愛人さん、いつもそんなこといいながら、ちっとも誘ってくれないじゃない。きっとひろこさんの方が大事なんでしょう!」 ひろこは愛人と同じ会社の仲間由紀恵似の中村ひろこのことだ。ひろこと付き合う前に千絵に随分と恋愛相談に乗ってもらったものだ。「それが最近うまくいかなくてさ!そろそろ潮時かなあなんて。」と心にもないことを男は言うものだ。「本当!男って嘘ばっかり!」と千絵は本当に怒っているようだ。注がれた水割りを飲みながら愛人は千絵との会話を楽しんでいた。すると奥の方で歓声が湧いた。数人の客が女の子を5,6人並べてきゃっきゃっ騒いでいた。
 良く見ると一人の客はどこか見覚えのある顔だった。「しゃ、しゃ、社長!」愛人が叫びながら後ろにのけぞった。そう、その男こそ、Bシステムズ社総帥であり社長の西本だったのだ。西本が岡田を睨みつけながら近づいてきた。「おお、岡田あ。お前、薄給のくせに高い店これるじゃあねえか。それに美人の千絵ちゃんといい仲のようだなあ。中村くんに言っとくよ。」続けて横から突然他の声が「岡田君、なかなか楽しそうだねえ。これくらい内の仕事も気合を入れて欲しいもんだねえ。」と、これは東亜工業大学の松山教授!さらに続けて横に数人の親父たちが愛人を睨みつけていた。山荘工業の関目部長、佃煮大学の四塩教授と大助教授、さらに東亜工業大学の春山教授、大西准教という大物ばかりだ。全員、西本社長の大学の同期だ。これはまず い!「しゃ社長、千絵ちゃんとはそんな仲ではありませんから。」横の千絵を見ると本気で不貞腐れている。と、千絵が社長に向かって「西本社長ん、前からお誘いされてた温泉、2人で今度行きましょうね。」
 「お!やっとその気になったか、千絵ちゃん。それじゃあ超豪華個室露天風呂付き温泉宿予約しとくよ!」と西本社長、それに呼応して周りの先生方が「西本も懲りんやつやのう!がはははと」上機嫌で皆席に戻っていった。「いやあ、社長と馴染みの店が同じだったとは知らなかったよお。」と愛人。「西本さんはもう開店当時からのお客様よ。あのメンバーはいつもバラバラなんだけど今日は丁度タイミングがあっちゃったみたい。何でもこの前事業仕分けで有名になったスパコンとかの打ち上げなだって。ふっかつ~とか叫んでたわよ。」と千絵。愛人は一気に白けてしてまった。「今日はこれで帰るよ。」との愛人の言葉に「ひろこさんによろしくね!」と嫌味たっぷりと千絵に言われながら、店を後にした。

翌日。Bシステムズ社。
 「おい岡田、今度は何したんだあ。西本社長が呼んでるぞ」と愛人が出社するなり鬼技課長にすごい形相で怒鳴られた。鬼枝は鬼と呼ばれる程の営業マンだ。業界からは24時間コンビニ男と言われる程睡眠をとらないで営業活動をしている。「私は何もしてません。」昨晩のことは黙っていた。その横でひろこが愛人をきっと睨みつける。昨晩、ひろこに電話するのを忘れていた。もうすぐクリスマスだし、イブにどこにいくか相談するはずだった。だが、クラブ・リンダで落ち込んだ愛人は電話することを忘れて、そのまま寝てしまったのだ。

同社内、社長室。
 「岡田君。君を見込んで今度新しい仕事をまかせたいんだがねえ。」と昨晩のはちゃめちゃな感じとは打って変わったようなそぶりの西本社長。「ありがとうございます。喜んでお引き受けしたいと思いますが、どのような仕事なのでしょうか?」と愛人は真面目な態度を保とうとしていた。「まあ、簡単なことだ。俺の運転手やれ。」と西本社長。「運転手!?」愛人が言いながら頭の中で考えていた。これはどういう意味なのだろうか?もしかすると左遷だろうか?それとも運転手というのは社長の行くところにいつもついて行くわけだから、秘書みたいなこともするという出世なのだろうか?愛人が悩んでいると、「まずは、今度の土日に鬼怒川温泉に行くから頼むぞ。」愛人はきっと重要顧客のゴルフ接待だなと思った。「かしこまりました、社長。」愛人は社長の言葉の意味を考えたが、社長と一緒にいることは悪いことではないと考えていた。

週末の土曜日。
 愛人は早起きして西本の専用車を運転し、西本の自宅へと向かった。時間通りに西本の家の前で待っていると暫くして西本がゴルフバックを携えて家から出てきた。早速 愛人は車から降りて西本の元へ近づいて行く。すると家からブロンドでスタイルの良い美人の女性が現れた。これが噂の西本の奥さんだ。西本の金髪好きは会社でも有名だ。
その金髪の女性は流暢な日本語で愛人に挨拶してきた。愛人は戸惑いながら「ハウドウユウドウ?」と馬鹿な返事を返してしまった。あまりの恥ずかしさに顔が真っ赤になって行くのを愛人は感じたので、さっさと西本のゴルフバックをトランクに積め込み車を出した。「社長、今日は鬼怒川のどのゴルフ場でしょうか?」を愛人が西本に場所の確認をしようとすると、「ああ、 ゴルフには行かねえ。まずは港区のこの住所に人を迎えに行くから。」と住所の記されたメモ用紙を渡された。どこかで見覚えのあるような住所だったが、あまり気に止めずに車を港区の方へと走らせた。西本は後ろの席で今朝の新聞を黙って読んでいた。
 愛人は指示された港区の高層マンションに到着しエントランスに車を止めた。「社長、着きました。」「うむ。ちょっと待っとけ。」と西本は携帯電話を取り出してダイアルしだした。かすかな呼び出し音が聞こえた。2,3回の呼び出し音の後に電話に誰かが出る声が聞こえる。「着いたぞ。」と西本は言うなり電話を切った。しばらくすると、馴染みのある顔がエントランスに現れた。「あ!」愛人は驚いて声をだしてしまった。それは千絵だった。「社長、おはようございま~す。」と車に乗るなり西本に体を押し付けている。「いつも綺麗だねえ、千絵。」と西本がキスをしようとすると軽く千絵が体をそらす。「社長、お楽しみは着いてから、ふふふ。」と昼のメロドラマっぽい雰囲気になってきている。「岡田、直接旅館にやってくれ。」と西本が愛人に指示した。愛人は思わずアクセルを踏み込んで車を出した。愛人は思い出していた。そう言えばクラブ・リンダで西本と会ったときに千絵が温泉旅行に行くと言っていた。そっかあ、だから俺が運転手なんだあ。いつもの運転手だと西本の悪事がばれてしまう。愛人であればリンダや千絵のことを知っている以上他言することはない筈だった。愛人は左足で地団太を踏みながら首都高速を東北自動車道の方に走らせた。後ろでは千絵が西本に寄り添ってうたた寝をしている。西本の助平そうな目が千絵に注がれていた。
 道が空いていたこともあって順調に目的の旅館に到着した。この旅館は鬼怒川では老舗の旅館でよくテレビの旅行番組で紹介されている高級旅館だ。和風の建物で天井の高い吹き抜けのロビーの中心には樹齢何百年かの木が天井まで飾られており、天井には和風のデザインが施してあった。愛人は西本、千絵、そして自分の荷物をトランクから下ろしチェックインに向かった。すでに千絵は西本と腕を組んでロビーの一角で出されたお茶を飲んでいる。千絵は愛人の方をチラッと見ては即顔を背ける仕草を繰り返していた。愛人が宿泊カードを記入し終えるとフロントが2つのキーを渡してくれた。話ではスイートの部屋1つと和室の部屋が1つらしい。「こちらの鍵が西本様と奥様、こちらが岡田様でございます。」とフロント。げ!西本は千絵と夫婦ということにして予約しているらしい。見え見えである。
 「社長。チェックインが終わりましたので仲居さんが部屋に連れて行ってくれるそうです。」と愛人が言うと「わかった岡田。じゃあ、明日は朝10時に車を玄関に回しとけ。」成程あとはお楽しみってことかと思いながら愛人は自分の部屋に入った。さすがに一流旅館だけあって部屋も景色も素晴らしく食事も完璧な懐石料理だった。
 だが食事の世話をしてくれた仲居さんが妙なことを言い始めた。「お客さんのお連れ様の奥様ですが大丈夫でしょうか?先ほどお部屋に伺ったら旦那様はお風呂に入られていて、奥様は居間で泣いてらしたんですよ。大丈夫ですか?って聞いたんですが何もお答えにならないで首を振るだけなんです。」愛人はおやっと思った。千絵は喜んで西本と温泉に来たものと思っていたの だが、もしかすると本当は愛人への当てつけだったのかもしれない。愛人は気になり始めた。さらに仲居が話を続けた。「実はあの部屋は逸話があって、たまにあの部屋に怪物が現れるらしいんですよ。でも私は信じませんけどねえ。この時代にお化けなんてねえ。でも奥様が泣いてたんで、もしかしたらって思っちゃって。ああ、馬鹿馬鹿しい。」と言い捨てながら仲居は後片付 けをして出ていった。愛人はまだ気になっていた。千絵が無事ならいいのだが・・・だが魔の手はすぐそこまで迫っていた。
つづく・・・

*ここに登場する人物・会社は架空のものであり、実際に似たものがあってもまったく関係ありません。

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